女性のがん
女性特有の癌には子宮がんと乳がんがあります。
子宮がんの内、子宮頸がんは20歳代後半から30歳代に発生のピークがあり、成人型がんの内最も早い年代で発生します(これは小児がんの次に来るがん)。妊娠、出産、子育てに直接影響を与えるがんでもあります。
また、乳がんと子宮体がん(内膜がん)はともに女性ホルモン依存性であり、40歳を超えると急速に増加してきます。日本では、乳がんと子宮体がんはともに40歳代後半と50歳代後半に二相性のがん発生のピークがあります。胃がん、大腸がん、肺がんが60歳代後半から70歳代にかけ発生のピークがある点と比べると、女性特有のがんは10~20年早く、特に子宮頸がんに至っては30~40年早く発生してくることが大きな特徴です。
妊娠を希望している方にとって子宮頸がんは大きな産科的リスクを持ちますし、乳がんや子宮体がんは子供が成人していない時期にがんとなってしまうケースが多いということです。女性にとってこの年代は最も活躍する輝かしい年代でもあります。この年代の女性は絶対に進んだがんになってはいけません。女性のがんは比較的予後が良いのですが、進行すると他のがんと同じであることに変わりはありません。現在のところ、癌の発生を確実に防ぐ方法はありません。早期がんであれば、1~7日以内の入院治療で済みます(場合によっては外来治療)。できるだけ早期にがんを見つけることが必要です。
子宮頸がん
子宮頸がんはヒトパピローマウイルスといわれる「発がんウイルス」によって発生する感染が原因のがんです(胃がん;ピロリ菌、肝炎;B/C型肝炎ウイルスなど)。
このウイルスは主にセックスなど人と人との接触を介して感染します。このため男女を問わず接触機会の多い若い人に多くの感染が認められます。ウイルス感染率は20~30歳代は男女とも20%前後ともいわれています。
このウイルスは若くて細胞分裂が盛んな細胞に感染するとウイルス自身の増殖や感染が盛んになることから、増殖や繁殖のしやすい若い細胞あるいは人を感染のターゲットとしています。ウイルス感染後5~10年でがんになる症例が多くまさに若い人が罹るがんといえます。全国からの報告では子宮頸がん(0期含む)は30歳代に前半に多いとされていますが、当対がん協会の昭和41年からの統計では20歳代後半の発見率が最も多く出ています。子宮頸がんは正に若い人を襲うがんといっても過言ではないと思います。そして子宮頸がんで死亡する人数も日本では増えています。
子宮体がん(子宮内膜がん)
女性ホルモンと密接に関係する女性ホルモン依存性癌です。罹患数、罹患率が急増をしているがんです。子宮頸がんも増加しているのですが、近年は子宮頸がんを罹患数で追い越してしまいました。昔より乳がんと兄弟がんとも言われてきましたが、がん発生の主要な道筋(cancer pathway)が乳がんとほぼ同じであることが遺伝子的に解明されてきました。子宮体がん発生数は乳がんの約半分(理由は乳房は二つ、子宮は一つ)です。月経が不純な方、不順になってきた方、月経が無くなった方、糖尿病の持病をお持ちのご婦人にはエコー検査で子宮の内宮を観察することをお勧めします。
乳がん
女性ホルモンと密接に関係する女性ホルモン依存性癌です。子宮体がん同様、罹患数、罹患率が急増をしているがんであり、女性のがんの中では最も多いがんになっています。早期であれば乳腺の部分切除(乳房温存手術)などの治療で済みます。日本人のホルモン環境が変化しているのかもしれません。今後も増加してゆく可能性の大きながんです、できる限り早期に発見することが望まれます。